野坂岳(913.5M) 2月8日(金) 雪  単独
今日は天気が悪そうで山は諦めていたが、8時頃に青空が広がって陽が射してきた。もしかしたら?と、すぐ思ってしまうのが私の単純で甘いとこである。そそくさと準備をして登山口へ向う。早朝は雪が降っていた。5cm程の積雪だが、軽くてふかふかの綿のような雪である。
9時前に登山口に着くが、駐車場には2台の車しか停まっていない。1台はMさんの車だ。準備をしていると、やはり期待を裏切って雪が降ってきた。でも今日の雪はいつものとは少し違い、ひらひらとゆっくりと落ちてくる真綿のような雪である。私の感性は人とはかなりズレているが、美しくロマンチックな雰囲気が漂う光景に見える。レインジャケットの上だけを着、スパイク付き長靴を履いて歩き出す。
木の枝に積った雪が、落ちる瞬間に粉々になって舞いながら降り注いでくる。見る目には大変美しいが、まともに被ると冷たく濡れてしまう。美しい爆弾を避けながら、すっかり雪景色に様変わりしたトチノキ地蔵に着く。
トレースが次第に深くなってくるが、今日すでに先に歩いている人がいるので助かる。九十九折の道から下を見るが、乳白色の世界が広がっているだけ。途中で穂高さんが下りて来られる。車がなかったので上られていないと思っていたのだが、さらに下の駐車場に停めらていたらしい。僅かな時間だが話をさせていただく。Mさんとは擦れ違わなかったらしい。はたして・・どこへ?
冬道にもトレースがあるが、しっかりしている通常の道を歩く。正面に白く雪を被った行者岩が見えてくる。雪は止み、空が少し明るくなってきたようだ。
一ノ岳の展望所に着くと、ガスが切れて下界が見えてくる・・が、それはやっぱり予想通り長くは続かなかった。積雪はここらで50cmぐらいだろうか?
ニノ岳との鞍部へ向うが、ニノ岳や三ノ岳は白いガス覆われている。やがて、また・・雪が!
ニノ岳から三ノ岳へと向う。ブナの枝々に積った真っ白な雪。自然が醸し出す造形美に何度も足を止めてしまう。粉雪がだんだん強く降り出してくるが、風がほとんどないのがありがたい。ジャケットの肩や腕が白くなり、帽子を手で叩くとフリースの手袋を通してその冷たさが伝わってくる。やがて、その感覚は指先に集中してくる。トレースの深さは膝を超え、僅か少し前の足跡も消し去ろうとする。足が沈む事が多くなり、だんだん歩き難くなってくる。だけど!・・気持ちがいい。
三ノ岳へは直登するが、踏み跡が柔らかく崩れ登り辛い。多い箇所では1M近くありそうだ。雪がたっぷり積った枝々を避け、潜るように登って小屋に着く。誰かいるようだ。取り合えず山頂へ向う。真っ白な雪原に浮ぶ標識と、同定盤?の半分近くが雪に埋もれている。風はないが、頬を突き刺すような、凍るような冷たい空気。冬の厳しさを感じさせられる。
小屋に入るとMさんがおられた。カンジキをつけている。山コースから二人でラッセルして3時間かかったらしい。道理で会わないはずだ。ガスの中で方向が分からなくなりそうだったと。今年になってまだ40日しか経っていないのに、今日で34回目の登頂だとか?少し話をして先に下りて行かれた。小屋の中はー4度、私は熱いコーヒーを点てて体を温める。
一向に降り止まない雪の中を、ショートカットしながら早足で下る。こんな日にまだ登って来る単独の女性がいた。
 END





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